ハバロフスク2003:国家・民族・宗教を超えて
8月9日:セミナー「東アジアにおける自然との共生と多様性の形成」
第3部「語り物と踊り」から 「芸能フェスティバル」の熱気へ

この記録は、企画制作チームの一員として、また実行委員会事務局メンバーとしてこのフェスティバルに参加した筆者の個人的な感想である。


ユイ・シャオフェイさん(日本大学講師)は「イマカンとユーカラの接点はあったか」について報告。イマカンはアムール川をはさんで中国側に居住するホジェン族(筆者注:ナナイの中国側での公称)に伝わる英雄叙事詩。シャーマニズムや熊祭りは、東北アジアに広く分布することであり、ホジェン族とアイヌだけでなく、広く共通点がある。ホジェン族とアイヌの文化は、狩猟採集経済であるための必然的類似点もあるが、交流による影響は十分考えられるとまとめた。


星野紘さん(東京文化財研究所名誉研究員)は「熊祭りに見られる歌と踊りの原初の姿」について報告。文明化がすすみ、グローバル化が顕著に進行している農耕地帯においても、様々な変容を経ながらも歌や踊りの原初的姿が、今なお命脈を保っているということである。つまり自然と共生する民族の人達のものとのこの類似性は、自然との共生から脱却して多様な文化を展開させていった農耕地帯の民の身体の中に、ひょっとしたら今なお太古の昔の血が流れているということかもしれない。


会場にはハバロフスク在住のナナイの人達が多数つめかけ、討論にも積極的に参加した。今は都市生活を営みながら自分たちのルーツはナナイの生活や文化にあると主張した。同族であるホジェンの人達の歴史と現状、さらに言語や文化に彼らの関心は集中した。「語り」について自らの調査結果に基づき発言するナナイ民族の参加者。


セミナーの日程を終え、レーニンスタジアム広場に戻ると、芸能フェスティバルが折からの雨をものともせずに熱気の中で進行していた。写真は津軽三味線の小山内薫の演奏風景。聴衆は三味線の音色が囁くようになるにしたがい、静まり返り、弦の激しい響きにはそれぞれ内側から呼応する高揚するメッセージを舞台に送り続けた。

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2003 Ippei Wakabayashi, Tokyo Japan