ユーラシア紛争地特別フォーラム(2002年3月9日、早稲田大学小野講堂)レポート
●第3部(4)講演を終えて

宗教に期待される役割とは?――講演を終えて――


それぞれのご感想を一言ずつお願いします(司会・若林氏)

 興味深いお話をありがとうございました。あまり時間がないのですが、それぞれのお話についてのご感想などについて、一言ずつお話しいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

原理主義をいかに克服するか(寺沢師)

 それでは、私からお話させていただきます。ロイさんのグローバリゼーションにおける「全てのものの商品化」というお考えについて、大変興味深く聞かせていただきました。自然、地球、そして人間の尊厳、生命なとあらゆるものの商品化についてのご指摘は、全く正当なご意見だと思います。特にこの「商品化」を通じて、人間の神聖な側面が非神格化されているのは、事実そのものだと思います。

 そこで、伝統的な宗教の側から、この非常に危険な兆候が明らかとなっている近代化という問題に対して、どう反応あるいは対応できるのかが、まさに問われているわけです。ところが、現実的な動きとして、伝統的な宗教が原理主義に回帰するという方向が指摘できると思います。そして、イスラム原理主義、ヒンドゥー右派などを見ても、反近代を志向する場合が多いのです。

 かつて日本は第2次世界大戦以前に、国家神道という伝統的な宗教を拠り所として、反西洋、反近代の思想のもとに、ファシズムを展開しました。これは日本そして日本の宗教にとって、大変悲劇的な経験でした。

 現代のいわゆる「原理主義」に偏りがちな宗教が、この轍を踏まずに世界の危機的な状況打開のために貢献できる展望を持たなくてはなりません。その1つの答えとしては、宗教の精神性、あるいは神聖さといったものを、あくまで維持し続ける必要があると思います。つまり、宗教の持つ精神性を通じて、世界を隔絶または分割させないために、そして多くの人たちの欲望を抑制するために、ポジティブに対応していくことができれば、宗教はこの困難な時代にあって、本当の役割が果たせると私は考えています。

宗教の本当の敵は「市場」という“宗教”(ロイ氏)

 宗教は、現在急速に進展しているグローバル化の中で、大きな挑戦を受けていると思います。かつて世界は、個々の人間には手が届かないほど非常に大きな存在でした。そこでは、それぞれの宗教が、お互いに隔絶した状態で存在することが可能でした。ところが、グローバル化の進展によって、それぞれの宗教間の距離が縮まってきています。そこで、ある宗教が別の宗教との間に、どんな関係を構築していくべきかという問題がクローズアップされているのだと思います。

 そのアプローチの方向として、マイナスとプラスの2つの可能性が考えられます。そして、私はマイナスのアプローチが、原理主義だと考えています。なぜなら、原理主義は新しい世界を破壊しようとするからです。この原理主義を推し進めていくと、現在のパレスチナとイスラエルのように、お互いに殺し合い、破壊し合うというネガティブな結果を招くことになります。従って、これは現実的なオプションとは考えられません。

 それでは、プラスのアプローチとは、どのようなものでしょうか。それは、宗教同士がお互いから学び合い、そしてこの現代世界において、宗教が本当に果たすべき役割について合意していくという方向です。本当に宗教の敵、あるいは対峙する概念というのは、まさに「市場」という“宗教”であることを、全ての宗教が理解すれば、物質的文明こそが宗教の対極にあることが理解されると思います。私はこのアプローチに非常に期待しています。

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2003 ユーラシア紛争地フォーラム実行委員会