ユーラシア紛争地特別フォーラム(2002年3月9日、早稲田大学小野講堂)レポート

第1部(1)司会コメント

まず、現地のリアルな状況に目を向ける

司会・林克明(フリージャーナリスト)


テーマはアフガニスタンとチェチェン

 おはようございます。第1部をはじめたいと思います。今日は数多いユーラシアの紛争地の中で、特にアフガニスタンとチェチェンをテーマに設定しています。現時点では「9.11」以降、アメリカが空爆をはじめとする大規模な軍事行動を行っているアフガニスタンが注目されていますが、アフガニスタンとチェチェンは、置かれた状況が非常に似通ったところがあると思います。


 例えばチェチェンでは、「チェチェン人=犯罪人」という大掛かりなネガティブキャンペーンが、ロシアのマスコミや多様な団体によって用意周到に行われ、戦争が始まる3年ほど前から、着々とチェチェン人に対するマイナスのイメージ作りが続けられてきました。そこで、タイミングよくアパート爆破事件などの凶悪なテロ事件が発生しました。


 この事件で300 人以上のロシア人たちが死亡しました。事件の捜査がろくに進展しないうちに、この事件にチェチェンが関与しているらしいという情報を、マスコミが大々的に流しました。そして、「チェチェン憎し」という憎悪に満ちた圧倒的な世論が沸騰しました。この世論を背景としてロシア軍がチェチェンに侵攻し、いわゆる「第2次チェチェン戦争」が勃発したのです。そして今、チェチェンの現地では、ほとんど民族浄化と言わざるをえないような状況が続いているのは、ご存じの通りです。


 一方、アフガニスタンに対しても、特にタリバンのイスラム原理主義的な強硬支配をクローズアップしたネガティブキャンペーンが、世界的に2、3年前から行われていて、そして「9.11」が起こったというわけです。こういう流れの中で、私などはアフガニスタンとチェチェンを、一緒に考えているようなところがあるのです。


 つまり、国家というか圧倒的な権力を持つ側が、自分たちに都合のよい大量の情報を、テレビ・新聞などのマスメディアを通じてたれ流し続けているため、本当の、現場からの真実の声が私たちに伝わらない、分からない、という状況が続いているのではないでしょうか。
アフガニスタン現場の映像や体験を伝える


 必ずしも真実を伝えないマスメディア報道の煙幕の隙間をかいくぐって、正確に状況を判断し、リアルにものを考えるために、私たちができることは2つあると思います。1つは、歴史的な背景などを踏まえて、冷静に情報を整理・分析することです。私たちのこうした作業の一端が、お手元にお配りした資料の内容に反映されていると思います。もう1つは、やはり現場にこだわることです。とにかく現場に行って、そこで暮らしている人たちの状況を、自分の目で見て判断することは、なににもまして重要です。


 そこで、この第1部では、実際にアフガニスタンなどの現場に入って、援助活動などを通じて現地の状況をつぶさに目撃している方たちのお話を聞くとともに、そういう活動の成果であるビデオなどの資料をご覧いただきます。そして、アフガニスタンの悲惨な事態に直面して、私たちがなにをするべきなのかについて、お考えいただければと思います。


 まずはじめに、当フォーラム実行委員会の代表をお願いしている早稲田大学の伊東一郎教授に、ご挨拶をいただきます。なお、この会場も伊東先生のご手配により、使わせていただいています。


 続いて、パキスタンのペシャワールを本拠にして、ハンセン病の治療を中心とした医療活動のほか、飲料水、農業用水確保のための井戸掘りを進めるなど、アフガニスタンの人たちのために献身的な活動を行っている、ペシャワール会からご提供いただいた、現地で撮影されたビデオを上映します。それから、フォトグラファーの川崎けい子さんに登場していただきます。川崎さんは現地の女性団体を通じた支援活動とともに、写真によって現地の事情を伝える精力的な活動を行っておられます。


 最後には、東京の大塚にあるモスク、マスジド大塚のクレイシ・ハルーンさんにお話いただきます。マスジド大塚では、アメリカのアフガニスタン空爆開始以後、2度にわたって現地に衣料品、医薬品などを届けるなど、継続的に支援活動を続けておられます。それでは、よろしくお願いいたします。

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2003 ユーラシア紛争地フォーラム実行委員会